ポスターの素敵なお茶碗に惹かれて、菊池寛実記念 智美術館に樂茶碗を観に行きました。樂茶碗とは、桃山時代に樂家の初代・長次郎が千利休の創意を受けて作ったのを始まりに、樂家代々に伝わる茶碗のことですが、今回の展覧会には、15代目吉左衛門さんが1999-2005年に創作した茶碗36点が展示されていました。
吉左衛門さんは、それまで茶碗には適さないとされてきた焼貫(やきぬき)-黒茶碗を焼いた後、さらに温度を上げて焼き貫く技法-を取り入れ、炎や灰が直接かぶることによる荒々しい器肌が特徴の斬新な作品を生み出しています。今回展示されていた茶碗には、現代的で大胆なデザインと400年の伝統とが見事に溶け合い、独特の美しさと強い存在感がありました。
作品の素晴らしさはもちろんのこと、今回は、美術館自体の美しさにも驚きました。贅沢な空間と効果的な照明の使い方、一つの部屋から隣の部屋の作品も見えるという建物の造りなど、作品の魅力が引き立つような工夫が随所に見られました。そして、美術館から出た時に現実世界を意識して、改めて美術館の中が非日常の夢の空間であったことを感じたのでした。