この本は、19世紀にラトビアで生まれた熱心な音楽愛好家の著者が、実際にショパンとリストのレッスンを受けた時の体験を綴ったものです。この二人の作曲家に関する本は沢山出ていますが、実際に接した人によって書かれたものは珍しく、作曲家の人柄や生活、また、当時の音楽事情が生き生きと伝わってくる大変面白い本でした!
著者は、当時パリでまだ珍しかったベートーヴェンの協奏曲「皇帝」をリストが演奏するというポスターに目を留め、音楽出版社でリストの住所を調べて(すぐに分かったそうですが、今では考えられないですね!)リストを訪ね、初めての弟子にしてもらいます。その場面は非常に印象的で、文面からは著者の興奮が伝わってきました。それにしても、当時のフランスではベートーヴェンはあまり理解されておらず、ピアノソナタとえば「月光」、「熱情」、「作品26(なぜこの曲なのかしら!?)」だけが知られていたというのも意外でした。
その後、著者はリストの推薦状を持ってショパンを訪ね、リストにレッスンを受けたショパンの「マズルカ」を弾くことになるのですが、想像しただけでワクワクする場面ですよね!著者は無事ショパンの弟子にしてもらえたようで、その後のレッスン模様や他の弟子の様子なども本の中で触れています。それによると、ショパンのレッスンは1回45分、著者は週2回だったようですが、見込みのある生徒には週3度もレッスンしていたのだとか!ショパンは懐中時計を手放さず、生活が分刻みで動いているので時間を守るよう皆に言っていたようですが、相当忙しい日々を過ごしていたのでしょうね。
そして、今の私の関心事であるプレイエルのピアノの話も多く登場していて、興味津々で読みました。やはりショパンはプレイエルを信頼し、プレイエル以外ではレッスンをせず、ほとんど全てのコンサートでプレイエルを使用していたようです。また、ショパンが親しくしていたカミュ・プレイエルの夫人は相当美人のピアニストだったようで、ショパンが有名なノクターン第2番を美しい表紙をつけて献呈した人であり、ショパンもリストも彼女を賛美していたというのは、今回改めて確認したことでもありました。
この本のおかげで、ショパンやリストの生きた時代にタイム・スリップ出来て、私の中のショパンのイメージも新たに広がりました。このイメージを大切にしながら、今度のリサイタルに向けて、また頑張りたいと思っています!