昨日は、フジコ・ヘミングさんのコンサートに行ってきました。生演奏を聴いたのは、実は初めて。フジコ・ヘミングさんと言えば、67歳の時にNHKの番組に取り上げられて大ブレイクしたピアニストですが、その時はTVで見て素晴らしいなと思いつつ、私自身は他に興味があったため、コンサートに行くことはありませんでした。
その後も、CDを聴いて素敵だと思うものの、実際に聴いた人の話の影響もあり、コンサートには足が向きませんでした。ですが、その後フジコ・ヘミングさんの書かれた本に感銘を受けて、何冊かを大切に持っていました。フジコさんの本は、全て簡単な言葉で綴られているのですが、音楽や芸術に対する核心を突いた内容になっていて、芸術家だなあ!と尊敬していました。4年前にはドキュメンタリーの映画も見に行って、感動していました。その時に書いたブログはこちら♪
最近は、機会があれば一度きちんと聴いておきたい、と思うようになり、数か月前からチケットを取って、この日を楽しみに待っていました。会場に行ってみると、平日の昼間15時にもかかわらず、サントリーホールは満席。本当に凄いことです!
調べてみると、フジコ・ヘミングさんは今年90歳になられるのですね!まだ暗くしたままのステージに、手押し車で登場されました。ピアノの前まで着くと舞台が明るくなり、満場の拍手。それから演奏が始まりましたが、今まで聴いたどのピアニストとも、まるで違っていました。お歳もあると思いますが、スピードや音量があるわけではない、構成もしっかりしているわけではないし、ミスもいろいろある・・・、けれども、最後までずっと惹きつけられる演奏なのですね。メロディの音色、ハーモニー(和音)の響かせ方、リズムの絶妙さ、心地よい音楽の運び方など本当に素晴らしくて、それこそ才能なのだろうな・・と思いました。
そして、効果を狙うような表現や、自己主張する感じはなく、自然、というのとも違って、ただただ真摯に誠実に音楽に向き合っている感じなのですね。そこには嘘が無いというか、生き様が音楽に表れていて、心の奥深くに響くものがありました。
また、会場中の人がフジコ・ヘミングさんのことが大好きで、彼女の発する音の全てに耳を傾けていたい、という気に満ち溢れた空間でした。そんな中で、フジコ・ヘミングさんの大きな愛に包まれた音楽を聴き、何ともいえず満ち足りた気持ちになることが出来ました。
それにしても、90歳近くになってショパンの黒鍵、革命、リストのハンガリー狂詩曲第2番、ラ・カンパネラなどを弾かれるなんて、本当に凄いですね!ベジタリアンとのことですが、どこからそんな力が出てくるのかしら・・・。
演奏を聴きながら、フジコ・ヘミングさんのこのお姿を、しっかり目に焼き付けておこう、と思いました。コンサートが終わって、またステージが暗くなり、手押し車で帰っていかれましたが、ステージ袖に入る前に立ち止まって私たちに手を振ってくださった時には、涙がこぼれました。フジコ・ヘミングさん、素晴らしい時間を本当にありがとうございました!!