先週は、彩の国さいたま芸術劇場音楽ホールにて、3日間、レコーディングを行いました。シューマンの作品を収録したファーストアルバムの時は、穏やかな曲調が多かったにも関わらず、だんだん指が痺れてくるほど疲労したのに、ショパンの「バラード第1番」、「スケルツォ第2番」、「英雄ポロネーズ」、「舟歌」などのドラマティックな大曲を含んだ今回は、どうなることかとハラハラドキドキでした。
まずは、収録する14曲を3日間でどのように録音していくのか、エンジニアの方々にご相談したのですが、録音の方法は演奏家によって様々で、1曲1曲仕上げていく人もいれば、通しで何度も弾いて録る人もいるのだとか。そこで、とりあえず最初は、全曲を通しで録ってみることにしました。といっても、全部弾くと80分近くもかかるので、途中2度ほどは少し休憩を取りました。
録音を終えると、どんな風に録れているのかが気になり、少しチェックするつもりが、次も次も・・・とやっているうちに、最初から最後まで全部聴いてしまいました(笑)。その間に、気になったところを楽譜に書き込んでいたのですが、そのメモを見ながら1曲ずつ練習し、再び、全曲を録音。ここまでで、もうかなり消耗しました(笑)。ただ、出来るだけ多くの録音を残しておきたいので、その後は静かな曲だけを何回か録って、一日目は終了。
二日目は、激しく力強い大曲を数回ずつ弾いていきました。そうすると、さすがに疲れてくるのですね。夕方には、それまで弾けていた箇所も指がもつれてきて、何度もトライするのですがうまくいかず、ため息・・。ちなみに、昨日はどんな感じで弾いていたのかな?と、初回の録音を聴かせてもらったら、何の問題もなく機嫌よく弾いている自分がいて、えーーっ!これがたった1日前のワタシ??と疑うほどでした。思わず発したのが、「昨日の自分がうらやましい・・・」。同じ人間でも、日によって、こんなに演奏って変わるものなのですね!
こうして録音を進めていくうちに、私は、あまり大きく休憩を取ったり、こまめに中断したり、同じ曲を何度も繰り返したりせずに、全曲を一気に弾いてしまった方がいいタイプなのでは、と感じました。その方が、1曲1曲を新鮮に感じられるし、波にのって集中していけるのかな、と。ただ、全曲通すとなると体力勝負にもなりますので、三日目は朝食をいつも以上にしっかり摂って(笑)、午前と午後に1回ずつ全曲を通し、全て終了、ということにしました。
このように録音した3日間でしたが、ソフトペダル(左の弱音ペダル)を踏んだ時の、ピアノ内部の微かな音にまで気を配らなければならない演奏は、ライヴの時とはまるで違う神経を遣うことになりますね。ライヴでは、お客様の気配を感じつつ、その時その時の自分の感覚に身を任せながら、出来る限り作曲家の描こうとした世界をお客様に伝えたい!との思いで演奏しますが、レコーディングでは、よりシンプルに作品そのものに向き合い、ショパン自身に思いを馳せ、自分自身の思いにも耳を傾け・・・と、音楽の静かな世界に入り込んでいるような感覚があり、これはこれで幸せな時間です。それに、今回は響きのいいホールで、ピアノ、調律師、エンジニアの方々にも恵まれて、とても貴重な経験をさせていただきました。
今後は、録音したものを全て聴いて、どのテイクを使うのかを選ぶ作業です。こちらも、とても神経を遣いそうですが、皆様に楽しく聴いていただける日を夢見ながら、まだまだ頑張るつもりです♪