毎年この時期になると、母校の大阪府立豊中高校の同窓会(東京支部総会)が開かれるのですが、最後はいつも皆で校歌を歌って締めくくることになっています。その時の伴奏CD(オーケストラ版)が、高めのキーでテンポも速いため、皆さんいま一つ乗りきれない印象。そこで役員の方々から、ピアノ伴奏を録音してくれないかというお話がありました。
録音場所はどこにしよう、自宅?それともどこかの小さなホール?と迷っていたら、知人が、エンジニアのいる都内のレコーディングスタジオを紹介してくれました。そのことを役員方に伝えると、折角だから少し多めにCDを作って大阪の本部にも届けましょう、とのこと。当初考えていたより話が膨らんでしまったので、こちらも少し力が入ってきました。
この豊中高校の校歌、実は山田耕筰作曲・北原白秋作詞によるもので、基本の4拍子の中に時折2拍子が交じったりする、なかなか味わいのある曲なんです。オリジナルは変ホ長調で、前述のCDも同じ調子。そこからどの程度キーを下げたら心地よく歌えるのか迷い、男性の意見も聞いてみたいと、同窓生でもある父に電話。電話口でピアノを弾きながら、「1音下げ」の変ニ長調あたりがいいのではということになり、折角だからオリジナルの変ホ長調も録音しておけば、との意見もくれました。
録音当日の朝、テンポの確認のために、会場の雰囲気を想像しながら何気なく口ずさむと、意外に自分は低いキーで歌っていることに気づいてしまいました。もしかして、「1音下げ」ぐらいでは甘いのでは!と焦り、急遽「1音半下げ」のハ長調も録音することに。
スタジオに着いて、結局「1音下げ」、「1音半下げ」、「原調」の3パターンを録音。このように同じ曲を違う調子で何度も弾くと、調の性格というものがよく分かりますね!エンジニアの方々も同感のようでしたが、なぜ山田耕作が変ホ長調を選んだのかが理解できました。やはり変ホ長調は、ベートーヴェンが交響曲「英雄」やピアノ協奏曲「皇帝」などにも用いたように、威厳と輝きのある調子なのですね。
というわけで、この度は校歌のCD制作を通じて、思いがけず楽しい経験が出来ました。スタジオにあったピアノが、たまたま1926年製のニューヨーク・スタインウェイだったのも貴重な体験。83年前のピアノに触れることなど、なかなかないですから・・・。やはり音色は、どこか懐かしさのあるもので、偶然ながら「校歌」の雰囲気にも合っていたように感じています。
さて、今年の総会の終わりには、皆さん気持ちよく、声高らかに歌ってくださるでしょうか。そうであったらいいなと祈りつつ、当日を楽しみに待っています♪