今年の庭園美術館でのリサイタルの時に調律&お話していただいた斎藤信哉さんの本が、ついに出版されました!出版の話は年末から伺っていただけに、今週、書店の新書コーナーに並んでいる本を見て、嬉しい気持ちが込み上げてきました。本からは、調律師のお仕事のみならず、大手楽器店の店長を長く勤める中で培われてきた斎藤さんの音楽への思いや生き様が、しっかりと伝わってきました。
タイトルにもあるように、日本では、ピアノは黒いものと思い込んでいる人が大半だけれど、実はヨーロッパでは木目調のピアノが非常に多い・・・。日本で当たり前になっているこうしたピアノの常識の数々に、この本は疑問を投げかけています。ピアノの世界に居ながら今まで気付かなかった目から鱗の情報が沢山あり、興味深く読みました。
高度経済成長期に生産台数で世界一となった日本製のピアノも、今では最盛期の7分の1の台数に落ち込み、価格の安さでも台数でも中国製にはかなわなくなっているとのこと。そこで今、日本のピアノづくりもヨーロッパのように、値段は高くても三世代は使える本当に質の良いピアノを作るべきだと斎藤さんはおっしゃいます。
私は今、ピアノといえばスタインウェイやベーゼンドルファーだけが素晴らしいのではなく、ヨーロッパの伝統の中で生き続けているメーカーがまだまだ沢山あり、それぞれのピアノが個性豊かで美しい音を持つことに関心を持っているのですが、この本を読み進めるうちに、新たな考えが湧いてきました。いつまでもヨーロッパの楽器を賞賛するのに終わらず、いつか、木に関わる歴史や文化、そして世界に誇れる繊細な職人芸を持つ日本人の作ったホンモノのピアノを、日本の演奏家としてその個性を生かした演奏が出来る日がくればいいなと・・・。
この本は、ピアノに関する楽しい情報が盛り沢山な上に、日本のピアノ界が今、進むべき道についても考えさせられる内容です。ピアノの仕事に関わる方にはもちろん、音楽を愛する全ての方に是非読んでいただきたいと思っています!
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