前回は、なぜ留学先をベルギーにしたのか、について書きましたが、当時のことをいろいろ思い出しましたので、今日はそれについて書きますね♪
ベルギーは、フラマン語圏(オランダ側の北半分)とフランス語圏(フランス側の南半分)、そして一部ドイツ語圏に分かれているのですが、ブリュッセル王立音楽院も、同じ敷地内にフラマン語とフランス語のセクションがあり、建物も、学長も先生方も、授業内容も全く異なるという面白い構造になっています。私の先生はフラマン語の方の所属で、そこにはフラマン語圏のベルギー人が通っているのですが、留学生の数も多く、留学生は英語を使う慣習になっていました。
ブリュッセルの街では、人々はフランス語を話す(表記は全て2か国語)ので、私は音楽院の中では英語、街ではカタコトのフランス語を話す、という生活でした。これがなかなか中途半端で、どれか一つの言語に集中出来れば・・・といつも思っていました。日本の友人の何人かは、フラマン語(オランダ語のベルギー版)も習っていましたが、私はピアノが手いっぱいで余裕がなく、ベルギーの学生達とは英語で会話。フラマン語を習いに行っていたら、もう少し打ち解けられたのだろうなと、今では思います。それはそうと、ベルギー人(フラマン語圏)の語学の堪能さには驚きました。大抵の人が、フラマン語に加えてフランス語や英語、ドイツ語など、瞬時に切り替えて巧みに話せるのですが、羨ましかったな~。そして、この時確信しました。語学は才能ではなく、環境だと(笑)。私も標準語と大阪弁ならバイリンガルなんだけど・・・。
さて、音楽院の授業ですが、日本の大学とは違った経験がいろいろ出来ました。例えば、ピアノ伴奏のクラス。一年間、歌の学生さん一人と組んで、歌の先生に個別レッスンしてもらうのですが、毎週何曲も渡されるので、相当な数の歌曲が学べました。私のパートナーは、なぜかゲント大学の哲学科に通うベルギー人のソプラノでしたが、繊細で素敵な声だったな~。何語の歌でも上手に歌ってくれるので、楽しかったです。それから、室内楽。こちらは、先生がレヴェルに合わせてメンバーも曲目も決めてくれるので有難く、ブラームスのピアノ五重奏曲やシューベルトのピアノ五重奏「鱒」などの大曲も弾けました。「鱒」のメンバーは、ベネズエラ、スペイン、ベルギー、アイスランド、そして日本、という多国籍でしたが、個人的なやりとりを通じて「国民性」も実感できました(笑)。それにしても、楽譜さえあれば、このメンバーで一つのものを創り上げることが出来るのですから、音楽って、やっぱり素晴らしいですね♪
それから、ポーランド人のハナちゃんというヴァイオリニストとも組んで、ブラームスやフランクのソナタなどを弾いて、いろいろなコンサートに出させてもらいました。ベルギーでは、先生が気軽にコンサートをアレンジしてくれて、コンサート会場に行けばお客様がいる。そこが日本と大きく違う点で、コンサートが人々の生活の一部になっていることが分かりました。
あと、面白かったのが、即興演奏のクラス。これは、日本の大学にはなかったですね。ブルガリア人の先生による一年間のグループ授業でしたが、授業の最初に先生が左手のコード進行を決めて、見本を弾いてくれて、その後、一人ずつ即興演奏するのを皆で聴く、というものでした。即興演奏はあまりしたことがありませんでしたが、慣れれば結構いつまでも弾いていられるものだなあと、自由な感覚になったことを思い出します。
他にも書きたいことがあったのに、もうこんな長さに!続きは、また近いうちに・・。思考が数十年前にワープする感覚も、なかなか楽しいものですね♪
写真の説明
1.伴奏法の先生が、メヘレンのご自宅に日本人留学生を招いてくださいました。ちなみにメヘレンは、ベートーヴェンが尊敬していた祖父(音楽家)の生まれ育った街。15世紀まで遡って、ベートーヴェン家はベルギーのフランドル地方出身であることが分かっています!
2.先生のお宅で写真用のレッスン風景(笑)。もちろん授業は音楽院で行われていました。街もお部屋も寒すぎて、コート着用しています。
3.隣がヴァイオリニストのハナちゃん
4.学生によるコンサートの後で