京料理店「菊乃井」の三代目主人である村田吉弘さんの書かれた本です。村田さん曰く、料亭とは「大人のアミューズメントパーク」なのだとか。本の中では、料亭や日本料理に対する思いの他に、料理人として、また、料亭の主人としての職人的な考え方が惜しげなく語られていました。
料亭では、お客さんからの予約が入った時点で、その席の目的に相応しい場としての献立、器、掛け軸、床の間のお花など全てを考えて準備をするのだそうです。料亭を運営していくには、料理のみならず、日本文化の隅々まで理解していなくてはいけないわけですから、大変ですね。
器や、掛け軸一つ選ぶのにもこだわるようで、「中途半端なもんを買うたらあかん。ものすごい安物かちゃんと残るようなもんを買うかどっちか」とおっしゃっいます。掛け軸は一本三百万も四百万もするそうですが、50年先の孫の代まで残したいものか、京都博物館の館長さんが来られたとしても恥ずかしくないものかということを常に考えて選ぶのだとか。その意識の高さには感心しました。
20歳の頃から、自分のライフワークを「日本料理を世界に広げること」にするという思いを抱き続け、2004年には東京にも料亭を開店されましたが、料亭というのは資本投下がすごい上に、京都から材料を運ぶデリバリーコストもかかり、村田さんの代では商売にならないのだとか。それでも、孫の代、ひ孫の代の日本料理の行く末を見つめて頑張り続ける姿勢には、ただただ頭が下がりました。