少し前に、留学時代にお世話になったラザール・ベルマン先生について書きましたが、今日はベルマン先生が「ブリュッセルにいるなら、是非習いなさい」とご紹介くださったエフゲニア・ブラギンスキー先生のことを書きたいと思います♪
留学時代を振り返ると、いろいろな思い出が浮かんできますが、この先生とのレッスンは、強烈に心に残っています。亡くなられてからもう10年以上になりますが、ベルマン先生と同門(師匠はゴリデンヴェイゼル先生)で、同じくユダヤ系旧ソ連出身の先生です。モスクワ音楽院に行く人が、その前に学ぶ「モスクワ音楽院付属中央音楽学校」で、長らく教えていらっしゃいました。
私がお目にかかった時は、既におばあちゃん先生、という感じでしたが、そのキャラクターは、実に個性的。生まれてこの方、あんなにズバズバものを言う人に出会ったことがありません(笑)。初めて伺って、何を弾いたかは忘れましたが(おそらく、よく弾き込んできた曲です)、それを聴かれての第一声が「あなたはアマチュアね!」でした。その時、私は日本のコンクールでいくつか賞をいただいたり、前年にはイタリアで、小さいですが賞をいただいたりしていましたので、どういうこと!?とビックリしました。今まで熱心に教えてくださった先生方のことも浮かんできて、正直、腹が立ちましたが、ではどこがアマチュアなのか、是非教えていただこう!と思ったのでした。
それから、ロシアンピアニズムの基本を教えていただくレッスンが始まったわけですが、それは非常に徹底したものでした。内容的には有難かったのですが、そこに先生の強烈な性格が加わるのです(笑)。例えば、レッスン時間の3分前にインターホンを押したら、「私はまだリップを塗ってないの!時間になるまで待ってて」と、外で待たされます。寒い寒い冬の日でも、お構いなし。仕方なく3分間、アパート周辺の道をうろうろして、手も冷え切った頃、ようやく定刻に入れてもらえるというわけです。
他にも、レッスン中、先生が大事なことを仰ったので、すぐに譜面台にある鉛筆で楽譜に書き込もうとしたら、「あなたのはそれじゃなくて、そっち!」と一番低い鍵盤の横ところに置いてある鉛筆を指差されます。今の私なら「はいはい、こっちね」と穏やかに対応出来ますが(笑)、当時は「もう、そんなのどっちでもいいでしょ!」と、いちいち腹を立てていたのでした。
そんな感じで、先生の性格には困らされつつ、それでも教えてくださることが新鮮で、結局3年間、毎週通い続けたのでした。次回は、その独特のレッスン内容について書きますね♪
写真の説明
1.ブリュッセルのご自宅にて
2.ヴァイオリニストの息子さんとのCDより