以前から一度聴いてみたいと思っていた、エリック・ハイドシェックのリサイタルに行ってきました。ハイドシェックは、今年72歳を迎えるフランスの名ピアニスト。噂には素晴らしいと聞いていましたが、全てのプログラムを聴き終えて、心から充実感と幸せを感じられるリサイタルでした。
長い年月をかけて活躍してきた熟練のピアニストに共通するものは、音楽の自然な流れの中での雄弁さだと思っていましたが、ハイドシェックも、まさにそうでした。テンポは、どちらかといえば速めなのですが、一音や一小節の中で語るものの多いこと!音色が美しく、多彩なのにも感心しましたが、1882年製造のエラールのピアノを愛用しているということで、そのようなこだわりも音作りに大きく影響しているのだろうと思いました。
素晴らしい音楽に加えて印象的だったのが、暗譜に関するハプニング。プログラム本編中も危ない箇所はあったのですが、何曲目かのアンコールで、弾き始めたものの途中で分からなくなり、再トライ後も中断。その時の「あ~~~、アイム ソーリー」と言った様子が何ともいえず人間らしく、客席も思わず拍手。その後、気分を変えて弾いてくれた曲がこれまた絶品で、ピアニストの誰もが恐れる暗譜のミスは、その人自身の実力が素晴らしければあまり関係なく、むしろ、プラスの印象になることさえあるのだと思いました。
昨年は何かとバタバタしていて、なかなかコンサートをじっくり聴く機会が持てなかったのですが、やはり生のいい演奏を聴くのが一番の勉強ですね。いろいろな意味で刺激を受け、自分の中にも多くの課題を感じ、またピアノに向かう上での励みになりました。