今年の初めから計画してきたCD制作も、レコーディングの日まで残すところ2週間となりました。今は、自分で弾いた録音を確認しながら練習する日々ですが、同時に、他のピアニストの録音を聴いたり、ショパンについて書かれた本を読んだりしながら、「自分はどう弾きたいのか」ということを考える毎日です。このようなことは、真剣になればなるほど見えてくるものがあり、本当に楽しい時間です♪
さて、今日はそのCDに収録する曲目についてのお話です。ショパンのCDを作るにあたって、どの作品を収録しようかとなった時にまず考えたのは、ズバリ、私の好きな曲を!ということでした。それでも、ショパンの作品は非常に多くて、例えば「ワルツ」だけでも好きな曲がありすぎるので、あれもこれも選んでいては、とても1枚のCDに収まりきりません。「バラード」も4曲とも大好きで、「第3番」なども考えていたのですが、やはりあの壮大な「第1番」は外せないな、ということで、泣く泣く諦めた曲が結構あります。そんなわけで、名曲の多い練習曲も、今回は残念ながら諦めることにしました。
ショパンの作品には、「ノクターン」、「ワルツ」、「即興曲」、「バラード」や「スケルツォ」、そして「ポロネーズ」に「マズルカ」など、様々なジャンルがありますが、今回はそこから少しずつでも選んで、出来るだけいろいろなショパンの魅力を1枚に収録したいと思いました。また、どなたもご存じのような名曲(「ノクターン第2番」、「幻想即興曲」、「雨だれのプレリュード」、「英雄ポロネーズ」etc.)も入れて、皆様に気楽に親しんでいただけるものにしたい、そして、私がこれまでリサイタル等で弾いてきた曲を、ここで一度、納得のいく形にして残しておきたい、という思いも込めて選曲しました。
このようにして曲目を決めてからは、レコーディングの日に向けてそれらを練習してきたわけですが、マズルカだけは、放浪を重ねました(笑)。ショパンが故郷を離れ、フランスに移り住んでからも、生涯にわたって日記のように書き続けたポーランドの民俗舞踊マズルカは、ショパンの魂の音楽とも言われていますが、60曲近くもあって、本当に魅力的な作品が多いですね!この曲もいいけど、こちらもいい、などとやっているうちに、夏頃までうろうろしてしまい、最終的に弾きたくなった曲は、今からで間に合うの??と少し焦ってしまいました(笑)。
その他に、どうしても入れたかった曲があるのですが、それは、「舟歌」です。今回選んだ曲のほとんどは、子どもの頃から好きで憧れていたものなのですが、「舟歌」は、大人になってから強く惹かれるようになった曲の一つです。この曲は、ショパンと恋人ジョルジュ・サンドとの関係が破局に向かい、健康状態も悪化していた頃の作品なのですが、全体に淡い光に包まれたような雰囲気があり、ショパンの繊細で複雑な心、痛みや孤独、憧れ、希望といったものが感じられる、ショパンの人生観が表れた作品のように思います。「優れた作品ほど、解釈の許容範囲が広い」というようなことを何かで読んだことがありますが、この作品の演奏は、奏者によって本当に様々で、この言葉の意味がよく分かります。ショパンの晩年の傑作といわれる作品であり、技巧的にも非常に難しいのですが、今の私のショパンに対する想いや、ショパンが描こうとした美しい世界を表現出来たらいいなと思っています。
このような感じで選んだ、お気に入りの曲の数々♪レコーディングは3日間で行いますが、自分なりに思いきって演奏出来るように、あと少し、頑張りたいと思っています!